ラグビーW杯日本大会で日本の決勝トーナメント進出にとって大事な一戦となるのが予選プールのスコットランド戦です。日本代表にとってスコットランドは記念すべき1勝をあげた相手。
振り返ってみましょう。
日本が初めて勝った強豪国がスコットランドです。
ラグビーでは、旧IRB8ヶ国が世界的な強豪国として知られています。
【補足:IRB】
IRB(国際ラグビー評議会)とは、ラグビーW杯を開催している世界的なラグビーの統括団体のこと。2014年に「ワールドラグビー」と名称を変更したので、現在では旧IRBと呼ばれます。
この旧IRBで中心的な役割を担っていた8ヶ国が、競技面でも世界的な強豪国でした。
8ヶ国とは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカです。
日本が旧IRB8ヶ国に初めて勝ったのは1989年(平成元年)。
5月28日のスコットランド戦(秩父宮)でした。
日本ラグビーにとって歴史的な偉業です。
翌日の新聞の見出しからも、そのことがわかります。
スコアは28-24。
トライ数は5(日本)-1(スコットランド)の圧勝です。
このときの日本代表監督は故宿沢広朗。
38歳、就任わずか3ヵ月目での偉業達成でした。
この勝利、「たまたま」ではありません。
宿沢監督は就任会見で「スコットランドには勝てると思います」と述べています。
これに対するマスコミの反応は冷ややかなものでした。
「ムリ」「ハッタリ」「ひとりよがり」。
なにせ相手はスコットランドです。
これまで日本が何度も戦って一度も勝てなかったIRB8ヶ国のひとつなのです。
記者がそう思うのも不思議ではありません。
何が日本に勝利をもたらしたのか。
スコットランド代表は主力メンバーの何人かが来日していなかった。
5月にしては蒸し暑い気候が、慣れていないスコットランドの体力を奪った。
こうした要因もあるかと思います。
ただ、一番の要因は周到な準備。
宿沢監督自らスコットランドの練習をラグビー場の隣のビルから覗いたほど。
(ちなみに、秩父宮ラグビー場の隣にある伊藤忠商事本社ビルからです)
そのうえで、必要な対策を練り、個々の選手にすべきことを伝える。
キックオフの前にやるべきことをすべてやって試合に臨んだのです。
試合後の会見で宿沢監督は、こう述べたそうです。
「お約束通り、勝ちました」。
宿沢監督にとっては、奇跡ではない計算された勝利だったのでしょう。
また、就任会見での「冷ややかな反応」に対する意地のようにも思えますね。