将棋の「4五桂ポン」がラグビーの攻撃方法を変えるのではないか?
そんな仮説を思いつきました。
将棋での「4五桂ポン」とは、先手居飛車の右桂が▲3七桂〜▲4五桂と序盤早々に攻めていく指し方のことです。ポンポン跳ねて4五に行く手なので、「4五桂ポン」というわけです。
将棋では桂馬が序盤早々に出ていくのは邪道とされていました。
「桂馬の高跳び歩の餌食」
後ろに戻れない桂馬は、調子に乗ってポンポン出て行っても、歩で取られてしまうだけ。
初心者の指し方だとされてました。
ところが、「AI」登場で、この考え方が変わります。
桂馬が序盤早々に出ていく手にソフトは高評価を与えたんですね。
ソフトが有効な手と判断したわけです。
その影響がプロの対局にも表れます。
例えば、2016年竜王戦第1局。
先手の丸山九段が角換わりから4五桂ポンで攻め込みました(第1図)。
(第1図)
以下、△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△4二角▲3四飛△2三銀▲3二飛成。
展開が早いですよね。
「攻めは飛車角銀桂」とじっくり構えて攻めるのとはスピード感が違います。
「4五桂ポン」は丸山九段以外にも藤井颯太七段らも指しています。こうした早仕掛けが成立するようになった背景には、細い攻めをつなげる技術が上がったことが考えられます。
ラグビーでスクラムから攻めるときにはセオリーがあります。
まずはFW(フォワード)で近場を攻める(1次攻撃)。
続いてセンター陣や別のFWが突っ込む。
相手のディフェンスラインが崩れるまで、この攻撃を繰り返します。
いきなりポンポンと外側までボールを回さないんですね。
相手の陣形が崩れてないのに、ボールを外まで回しても、攻撃側が孤立してしまいます。
敵に囲まれてボールを奪われてピンチになるだけ。
「桂馬の高跳び、歩の餌食」状態になってしまうんですね。
このため、ラグビーでもスクラムからいきなり外まで(ウイングまで)ボールを回すのは危険だとされています。ただ、将棋では危険とされていた「4五桂ポン」が見直されています。
ラグビーではどうでしょう?
「4五桂ポン」をラグビー風に言い換えると、「ウィング直(ちょく)」です。
スクラムからの1次攻撃でウイングまでパスを回してしまう。
この細い攻めがつながるか?
ラグビーで、この攻撃を成立させるカギとなるのはウィングのボールキープ力です。
捕まって相手にボールを奪われてしまってはダメ。
相手に捕まっても、味方が来るまでボールをキープ。
これができれば「ウィング直(ちょく)」が成立します。
将棋界では4五桂ポンが成立したことで攻撃のバリエーションが増えました。
ラグビー界ではどうでしょう?
スクラムからの1次攻撃はFWによるサイド攻撃。
将棋で言えば、「開戦は歩の突き捨てから」みたいなものですよね。
そればかりでは、観ていて飽きてしまいます。
ときには「4五桂ポン」のような攻撃をラグビーでも見てみたいと思っています。